ライブラリー:食卓のあかりを考えよう

夕暮れ時から楽しむ食卓

2013/06/14

春から秋にかけ日の長い季節など特に、
まだ外が少し明るい頃からキャンドルを灯し、
夕食を楽しむことをおすすめします。

日没後1~2時間くらいの、夕暮れ時から夜に変わっていく時間帯は
自然のあかりとキャンドルのあかりの移ろいが格別に美しく、
また豊かに感じられる時です。

カーテンを閉め、均一なあかりの中で食事をするより
この移ろいゆく世界を豊かに感じながら、
ゆっくりと食事を楽しんでみてはいかがでしょう。

自然のあかりとキャンドルのあかりの移ろい

1.トワイライトの時間からお食事開始。

夕暮れ時の景色が少し青みがかっている頃から、キャンドルを灯してお食事を開始しましょう。
オレンジ色のキャンドルのあかりが一際美しく映える時間帯でもあります。

日没後の数十分は「マジックアワー」とも言われる時間です。
太陽は沈んでいながら残光があり、まだ比較的明るいため、
外の明るさだけでも食事は可能です。
キャンドルのあかりは周囲を照らすというより補助的で、
青い光と温かみのあるあかりが美しく混ざり合います。

2.日が落ちて暗くなってきた時間

徐々に暗くなっていくと、外の明るさよりキャンドルのあかりのほうが強くなり、
次第に周囲のものが浮かび上がってきます。

少しずつあかりの色味が変わっていく様子を感じてください。
 

3.すっかり暗くなった時間

外が暗くなってきたら、室内に間接照明をプラスしましょう。
写真には写っていませんが、この撮影時はスポットライトを室内の壁に当てています。
壁や天井にあかりを当てると、反射光がテーブルを柔らかく包み、
キャンドルのあかりがバランスよくテーブル上で輝きます。

ゆらめくキャンドルのあかりが人をリラックスさせてくれます。
 

あかりの移ろいに間隔を研ぎすませて

だんだんと変化していくあかりの元で、ゆっくり話をしながら食事をすることは
とても贅沢で豊かな時間です。


少し難しい話になりますが、実は人には明るさによって異なる目の働きがあります。

明るいところで働いている目の状態を、「明所視(めいしょし)」と呼びます。
日中から夕暮れまでの明るさの状態をイメージしてください。

それから暗いところで働いている目の状態を、「暗所視(あんしょし)」と呼びます。
いわゆる夜の状態です。

そしてその中間の目の状態を、「薄明視(はくめいし)」と呼びます。


照明デザイナーの東海林弘靖さんによると、
日が暮れゆく時間帯、人の眼は「薄明視」の状態になって
光に対する感覚がもっとも研ぎ澄まされるのだそうです。

電灯のなかった時代、そもそも人は夕暮れ時から夜にかけ、とても繊細な光を楽しんできました。
薄明視や暗所視の働きと共に、豊かな世界を感じてきたのです。
しかし現代のように夜でも明るい暮らしでは、いつも「明所視」の状態のままになってしまいます。

この環境が本来の眼の働きを阻害し、「感性を退化させている」と東海林さんは指摘されています。


時間を表す日本語はとても多く、例えば夕方から夜にかけては
「黄昏」(夕暮れの人の顔が判別しにくくなる時間)
「入相」(日が暮れる頃、日が山の端に入るころ)
「宵」(日が暮れ夜になって間もない頃)をはじめ、
「夕暮」「日暮」「薄暮」「火点し頃」「宵の口」等、快挙にいとまがありません。

繊細な感覚を研ぎ澄ませてくれる、薄明視や暗所視の状態で過ごす時間。
移ろう時間とあかりを感じながら、ぜひ心豊かな食事を楽しんでみてください。



撮影協力:倉敷 御坂(おんさか)の家 

御坂の家は、「暮らすように泊まる」短期滞在のための賃貸住宅です。
NPO法人町家トラストが修理・再生した町家で
倉敷美観地区の東、小高い丘の南斜面に位置し、倉敷の町並みを眼下に見下ろすことができます。
町家の雰囲気を感じながらゆっくり快適に過ごすことができます。